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実家じまいコラム

実家がゴミ屋敷になるのはなぜ?心理的な背景と、家族の関わり方・相談先

この記事は、官公庁・関連団体の公式情報などの一次情報と出典を確認したうえで、実家じまい案内所編集部が作成・更新しています。編集方針については運営ポリシーをご覧ください。

この記事のポイント

  • 環境省の全国調査(令和4年度・回答率100%)では、市区町村が条例等で罰則規定を設けなかった理由として『いわゆる「ごみ屋敷」状態になる案件は、福祉的なサービスを必要とする方がほとんどである』という趣旨の回答が挙げられています(出典: 環境省)
  • 厚生労働省『令和5年版厚生労働白書』が引用する自治体アンケート(全国1,741市区町村・回収率44.4%・複数回答)では、セルフ・ネグレクトの原因として『本人の認知症(疑いを含む)』83.6%、『本人の精神疾患(疑いを含む)』82.4%、『経済的困窮』70.4%、『家族・親族とのトラブル、人間関係』69.5%などが挙げられています(出典: 厚生労働省)
  • 同白書が引用する調査では、セルフ・ネグレクトに該当する状態として『必要な受診・治療を拒否している』(『当てはまる』『とても当てはまる』の合算68.7%)などが高い一方、『認知症である(疑いを含む)』は20.0%、『精神疾患がある(疑いを含む)』は20.4%にとどまり、病気の有無だけでは説明できないケースが少なくないことがうかがえます(出典: 厚生労働省、当サイトで合算)
  • 環境省調査では、ごみ屋敷事案を把握したきっかけの13.9%(92市区町村)が『原因者の親族等からの相談』でした。家族からの相談は実際に受け付けられている経路の一つです(出典: 環境省)
  • 高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターは、全国5,487か所(支所を含めると7,374か所)に設置されています(出典: 厚生労働省、令和7年4月末現在)
物が積み重なった部屋の様子(イメージ)

※画像はイメージです(写真素材: Pexels)

久しぶりに実家に帰ったら、物であふれた部屋を見て言葉を失った。以前はきれい好きだった親が、なぜこうなってしまったのか分からない。「だらしないから」「怠けているから」と責める気持ちになる一方で、心のどこかで「何かあったのでは」と心配になる——そんな戸惑いを抱える方は少なくありません。この記事では、実家や親の家が「ゴミ屋敷」化してしまう背景について、環境省・厚生労働省が公表している調査資料をもとに整理し、家族がどう向き合い、どこに相談できるかをまとめます。特定の病名や状態を家族や本人に当てはめることはせず、公的機関の公表情報の紹介にとどめます。

「だらしないから」では説明できない — 公的調査からわかること

住まいに物がたまっていく状態は、単に本人の性格や意欲の問題として片づけられるものではありません。環境省が全国1,741市区町村を対象に実施した調査(回答率100%・調査時点は令和4年9月末)では、罰則規定を条例等に盛り込まなかった理由として、「単なるごみの片付けや強制的な手法では根本的な解決に至らないと考えており、対象者自ら問題解決に向かうよう支援することとしている」「罰則規定を盛り込み適用したとしても、原因者が抱える根本的原因を取り除かなければ、事案の解決に至らないと考えているため」「いわゆる『ごみ屋敷』状態になる案件は、福祉的なサービスを必要とする方がほとんどであるため」といった趣旨の回答が寄せられています(出典: 環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「令和4年度『ごみ屋敷』に関する調査報告書」、令和5年3月公表)。

現場で実際に事案に対応している自治体の側が、「取り締まり」よりも「支援」を軸に据えている点は、家族が状況を理解するうえでも参考になります。同調査では、条例を制定する際に工夫した点として「福祉的アプローチを重視し、単にごみを片づけるだけではなく、当事者に寄り添い、生活上の諸課題や地域社会における孤立を解消し、再発防止も含めた根本的な問題解決につなげることを基本方針としている」という回答も紹介されています(出典: 同調査報告書)。

セルフ・ネグレクト — 「自分の生活を放っておいてしまう」状態

物が積み重なっていく背景を考えるうえで、行政や研究の分野で使われている言葉に「セルフ・ネグレクト」があります。自分自身の身の回りのことや健康管理、住環境の維持などを、本人が放任・放棄してしまっている状態を指す言葉です。

厚生労働省の「令和5年版厚生労働白書」は、自治体を対象にしたアンケート調査(全国1,741市区町村への郵送調査・回収率44.4%・複数回答、資料は「自治体の包括的権利擁護体制に関する調査研究報告書」平成30年度)の結果として、セルフ・ネグレクトの原因に関する集計を紹介しています。回答数の多い順に、「本人の認知症(疑いを含む)」83.6%、「本人の精神疾患(疑いを含む)」82.4%、「本人の知的障害(疑いを含む)」73.6%、「経済的困窮」70.4%、「家族・親族とのトラブル、人間関係」69.5%、「近親者の死亡や病気」61.1%などが挙げられています(出典: 厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」図表2-2-29)。

自治体アンケートでセルフ・ネグレクトの原因として挙げられたもの。本人の認知症(疑いを含む)83.6%、本人の精神疾患(疑いを含む)82.4%、本人の知的障害(疑いを含む)73.6%、経済的困窮70.4%、家族・親族とのトラブル、人間関係69.5%、近親者の死亡や病気61.1%

(出典: 厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」図表2-2-29。資料は自治体の包括的権利擁護体制に関する調査研究報告書・平成30年度)

このグラフから分かるのは、認知症や精神疾患の「疑い」だけでなく、経済的な行き詰まりや家族・近隣とのトラブル、身近な人を亡くした喪失感など、複数の要因が重なって生じている場合が多いということです。単一の原因に単純化できるものではありません。

「病気があるから」とは限らない

一方で、同じ白書が紹介している別の調査結果は、注意すべき点も示しています。セルフ・ネグレクトに「該当する状態」についての設問で、「当てはまる」「とても当てはまる」と回答された割合を合算すると、「必要な受診・治療を拒否している」68.7%、「必要な介護・福祉サービスを拒否している」65.2%、「衣類や身体の不衛生が放置されている」61.6%、「不衛生な家屋に居住している」54.0%と高い一方で、「精神疾患がある(疑いを含む)」は20.4%、「認知症である(疑いを含む)」は20.0%にとどまっています(出典: 厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」図表2-2-30、「当てはまる」「とても当てはまる」の割合は当サイトで合算)。

セルフ・ネグレクトに該当する状態のうち『当てはまる』『とても当てはまる』の合算割合。必要な受診・治療を拒否している68.7%、必要な介護・福祉サービスを拒否している65.2%、衣類や身体の不衛生が放置されている61.6%、不衛生な家屋に居住している54.0%、精神疾患がある(疑いを含む)20.4%、認知症である(疑いを含む)20.0%

(出典: 厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」図表2-2-30をもとに当サイトで合算・作成)

つまり、実際にセルフ・ネグレクトに該当すると判断されたケースの多くは、必ずしも認知症や精神疾患の診断・疑いがあるとは限らないということです。「うちの親は病院にも行っているし、認知症でもないから大丈夫」と思っていても、生活の乱れが進んでいる場合はあります。逆に、家族が「病気に違いない」と決めつけて本人を追い詰めてしまうことも避けたいところです。この記事では特定の病名や診断名を当てはめることはせず、気になる変化があれば、まずは地域包括支援センターや医療機関など専門機関に相談することをおすすめします。

「相談していい」— 家族からの声は実際に届いている

「家族が口を出していいのか」「自治体に相談すると大げさになるのでは」とためらう方は少なくありません。しかし、前掲の環境省調査では、市区町村が「ごみ屋敷」事案を把握したきっかけとして、「市民からの通報」(88.7%)に次いで「パトロールによる把握」(23.1%)、「原因者の親族等からの相談」(13.9%・92市区町村)、「原因者からの相談」(9.5%)が挙げられています。「その他」の回答には、「福祉部署からの相談」「民生委員からの相談」「地域包括支援センターやケアマネジャーからの相談」といったものも含まれています(出典: 環境省「令和4年度『ごみ屋敷』に関する調査報告書」)。

家族からの相談は、実際に自治体が受け付けている経路の一つです。近隣からの通報を待つのではなく、状況を最もよく知る家族の側から先に相談する道は、すでに一定数の実績があります。

また、「相談すると強制的に撤去されるのでは」という不安についても、同調査では、敷地内のごみを撤去したと回答した114市区町村のうち112市区町村(98.2%)が、原因者等の同意を得たうえで撤去していると回答しています。個別の対応は自治体によって異なりますが、全国的な傾向としては、本人の同意を得ながら進める運用が中心であることが調査から読み取れます。

家族が最初にできること — 責めずに向き合うために

物が積み重なった状況を目の当たりにすると、つい「なぜこんなことに」「早く片付けて」と口にしたくなります。しかし、前述のとおり、本人が置かれている状況にはさまざまな事情が重なっていることが多く、頭ごなしの説得は、かえって本人の抵抗や孤立を強めてしまうことがあります。

  • 「捨てる話」からではなく、安全面から: 転倒しやすい動線や、火の周り、避難経路の確保など、命に関わる部分から話を始めると、本人も受け止めやすくなることがあります
  • 範囲を小さく区切る: 家全体ではなく「玄関まわりだけ」「通路だけ」のように、1回で終わる大きさに区切って提案する方法があります
  • 判断は本人に残す: 家族が代わりに勝手に処分すると、その後の協力が得られにくくなることがあります。運び出しや分別は手伝いつつ、残すか手放すかの判断はできる限り本人に委ねる形が現実的です
  • 一人で抱え込まない: きょうだいや配偶者、地域包括支援センターなど、状況を共有できる相手を先に作っておくと、長期戦になっても続けやすくなります

話し方の具体的な工夫については、「実家の片付けを親と話し合うコツ」で詳しく解説しています。また、「片付けられない」という状態そのものについては、「親が実家を片付けられないのはなぜ?」もあわせてご覧ください。

片付けを進めるときの考え方

心理的な背景への理解と、実際の片付け作業は分けて考える必要があります。物が積み重なった住まいは、転倒・崩落・害虫・カビ・火災のリスクが通常の住居より高くなっていることがあるため、安全の確保を最優先にしたうえで、生活動線(玄関からキッチン・トイレなど)を確保することから始めるのが基本的な進め方です。貴重品や重要書類がごみに紛れていることもあるため、早い段階で分別しておくことも大切です。

  • 物の量が多く、生活動線の確保だけでも数日以上かかりそうな場合
  • 害虫・臭いなど、衛生面の問題がすでに大きくなっている場合
  • 本人や家族だけでは体力的・精神的に難しいと感じる場合

上記のような状況では、無理をせず業者への依頼を検討することが現実的です。自分で進める場合の具体的な手順は「ゴミ屋敷の片付けはどこから始める?」、業者に依頼する際の費用の目安は「ゴミ屋敷の片付け費用はいくら?」、業者選びのポイントは「ゴミ屋敷の片付けを業者に依頼する場合の選び方」で詳しく解説しています。

相談先 — 一人で抱え込まないために

家族だけで抱え込まず、性質の異なる相談先を組み合わせることが現実的です。

  • 地域包括支援センター: 高齢者の総合相談、権利擁護、地域の支援体制づくり、介護予防に必要な援助などを行う機関です。厚生労働省によると、令和7年4月末現在で全国5,487か所(支所を含めると7,374か所)に設置されています(出典: 厚生労働省「地域包括支援センターについて」)。片付けそのものを代行する機関ではありませんが、生活全体の困りごとの入口として相談できます
  • 自治体の窓口: ごみの出し方や収集の相談、福祉的な支援の窓口です。制度の有無や内容は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください
  • 片付けの事業者: 物量が多く、家族だけでは運び出せない場合の依頼先です。家庭から出た廃棄物の収集運搬には市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可(または委託)が必要とされているため、依頼前に許可の有無を確認することをおすすめします

当サイトでできること

当サイトには、医療・福祉の専門的な相談を受け付ける窓口はありません。心身の状態が心配な場合は、地域包括支援センターや医療機関など専門機関にご相談ください。

一方で、実家や親の家の片付け・清掃については、地域の事業者への相談が選択肢になります。物量が多く自分たちだけでは難しい場合や、費用の目安を知りたい場合は、「地域から相談先を探す」からお近くの相談先をご確認いただけます。

まとめ

実家がゴミ屋敷化する背景には、認知症や精神疾患の疑いだけでなく、経済的な困窮、家族・近隣とのトラブル、身近な人を亡くした喪失感など、さまざまな事情が重なっていることが少なくありません。環境省の調査でも、多くの自治体が「福祉的なサービスを必要とする方がほとんど」という認識のもとで対応にあたっています。家族が動くときは、「片付けさせる」のではなく、まず何に困っているのかを一緒に整理する姿勢が大切です。家族からの相談は実際に自治体へ届いている経路の一つであり、地域包括支援センターや自治体の窓口、片付けの事業者など、性質の異なる相談先を組み合わせながら、無理のないペースで進めていくことをおすすめします。

よくある質問

実家がゴミ屋敷になるのは、親の性格やだらしなさが原因ですか?

そう決めつけられるものではありません。厚生労働省『令和5年版厚生労働白書』が引用する自治体アンケートでは、セルフ・ネグレクトの原因として、本人の認知症や精神疾患(いずれも疑いを含む)のほか、経済的困窮、家族・親族とのトラブル、近親者の死亡や病気など、複数の要因が挙げられています。環境省の調査でも、多くの市区町村が『福祉的なサービスを必要とする方がほとんど』という趣旨の認識を示しています。単純に本人の意欲や性格だけの問題として片づけられる話ではありません。

「セルフ・ネグレクト」とはどういう状態ですか?ためこみ症とは違うのですか?

セルフ・ネグレクトは、自分自身の身の回りのことや健康管理、住環境の維持などを放任・放棄している状態を指す言葉として、行政や研究の分野で使われています。厚生労働省の白書が引用する調査では、『不衛生な家屋に居住している』『必要な受診・治療を拒否している』といった状態が挙げられていますが、同じ調査で『認知症である(疑いを含む)』に当てはまる割合は20.0%、『精神疾患がある(疑いを含む)』は20.4%にとどまっており、特定の病気があることが前提の状態ではありません。「ためこみ症」は物を手放せなくなる状態を指す言葉として使われることがありますが、この記事では特定の診断名を当てはめることはせず、公的機関が公表している調査結果の紹介にとどめます。実際の診断や治療の要否は、医療機関などの専門家に相談してください。

家族から自治体に相談してもいいのでしょうか?

環境省の全国調査では、市区町村が「ごみ屋敷」事案を把握したきっかけのうち13.9%(92市区町村)が「原因者の親族等からの相談」でした。「福祉部署からの相談」「民生委員からの相談」「地域包括支援センターやケアマネジャーからの相談」なども回答として挙がっており、家族からの相談は実際に受け付けられている経路の一つです。ご本人が高齢の場合は、地域包括支援センターも相談先の候補になります。

本人にどう声をかければいいですか?「片付けよう」と言うと怒られてしまいます。

「捨てる話」からではなく、安全面(転倒しやすい動線、火の周り、避難経路)を入り口にすると、本人も受け止めやすくなることがあります。範囲を「玄関だけ」「廊下だけ」のように小さく区切って提案する方法も有効です。話し方の具体的な工夫は「実家の片付けを親と話し合うコツ」で解説しています。判断は本人に残し、家族が代わりに勝手に処分しないことも、その後の協力を得るうえで大切なポイントです。

物の量が多く、家族だけでは対応できません。どうすればいいですか?

無理をせず、業者への依頼や自治体への相談を検討してください。作業の具体的な手順は「ゴミ屋敷の片付けはどこから始める?」、費用の考え方は「ゴミ屋敷片付けの費用はいくら?」で解説しています。業者に依頼する場合は、一般廃棄物収集運搬業の許可の有無を確認することが基本的なポイントです。地域の相談先は「地域から相談先を探す」からご確認いただけます。

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