実家じまいコラム
実家の片付けを一人っ子が担うとき — 先に決める順番と、一人でも使える窓口
この記事は、官公庁・関連団体の公式情報などの一次情報と出典を確認したうえで、実家じまい案内所編集部が作成・更新しています。編集方針については運営ポリシーをご覧ください。
この記事のポイント
- きょうだいが複数いる前提は、今の家族の実態と必ずしも一致しません。結婚持続期間15〜19年の夫婦のうち『子ども1人』の割合は20.4%で、前回調査より増加しています(出典: 国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査」2026年9月公表)
- 介護の場面でも、判断を一人で担う構造は珍しくありません。要介護者等と同居する主な介護者の続柄は『配偶者』22.5%に次いで『子』が18.2%です(出典: 厚生労働省「2025年国民生活基礎調査の概況」)
- 実家の片付けで最初に止めるべきは『物の処分』です。遺品や家具を処分すると『相続財産の処分』とみなされ相続放棄ができなくなる場合があります(民法第921条)。相続放棄の期限は相続の開始を知った時から3か月以内(民法第915条)、相続登記の申請期限は3年以内です(法務省、2024年4月1日義務化)
- 当サイト収録の遺品整理・片付け関連業者159社(2026年10月1日時点)を集計すると、生前整理に対応する業者が117社(73.6%)、遺品買取に対応する業者が79社(49.7%)、受付時間を公式サイトに記載している業者が125社(78.6%)ありました(出典: 当サイト収録業者データベース・159社を集計)
- 判断に行き詰まったときの相談先には無料のものがあります。法テラスは経済的に余裕のない人向けに無料の法律相談(同一問題3回まで・1回30分)を提供し、地域包括支援センターは全国5,487か所(令和7年4月末時点)に設置されています(出典: 法テラス、厚生労働省)
※画像はイメージです(写真素材: Pexels)
実家の片付けについて、誰にも相談せず自分だけで決めている——きょうだいがいない一人っ子の方だけでなく、きょうだいはいても遠方や事情があって実質的に自分一人が窓口になっている長男・長女・娘という方も含めて、この記事は「相談相手なしに、すべての判断を一人で下し続けている人」に向けて書いています。進め方の工夫や気持ちの整理は他の記事に譲り、ここでは一人で担う場合に何を先に決め、どこに頼れるかという判断材料だけを整理します。
きょうだいが分担できる前提は、今の家族には必ずしも当てはまらない
「きょうだいで分担すればいい」というアドバイスは、きょうだいが複数いることを前提にしています。しかし国立社会保障・人口問題研究所の調査では、結婚持続期間15〜19年の夫婦のうち「子ども1人」の割合は20.4%で、前回調査(2021年)より増加しています(出典: 国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査」2026年9月公表)。およそ5組に1組の夫婦が「子ども1人」で、きょうだいがいない前提の家庭は特別なケースではありません。
きょうだいがいる場合でも、実際に実家へ通える・判断ができるのが1人だけという状況は珍しくありません。厚生労働省の調査では、要介護者等と同居する主な介護者の続柄は「配偶者」が22.5%で最も多く、次いで「子」が18.2%です(出典: 厚生労働省「2025年国民生活基礎調査の概況」)。この調査はきょうだいの人数までは示していませんが、介護の段階で「子」が主な担い手になっている家庭では、その後の実家の片付けも同じ人に判断が集まりやすいことは想定しておいたほうがよいでしょう。
親が健在で、まだ片付けの話を切り出せていない段階なら、「捨てる・捨てない」から話を始めない工夫が役に立ちます(「実家の片付けを親と話し合うコツ」)。すでに片付けが始まっていて、終わりの見えなさに疲れている場合は「実家の片付けにうんざり…それでも前に進むための現実的な考え方」もあわせて参考にしてください。状況(親が健在/亡くなった後/空き家)ごとの具体的な進め方は「実家の片付けはどう進める?」にまとめています。
最初に手を止める — 一人で担うときに先に決める順番
相談できる相手がいないまま片付けを進めると、「とりあえず目の前の物から処分する」という順番になりがちです。しかし一人で担う場合ほど、最初に止めるべき物と、期限がある手続きを先に確認しておくことが重要です。後から「あれを処分しなければよかった」と気づいても、相談相手がいなければ軌道修正に時間がかかるためです。
まず止めるのは「物の処分」
遺品や家具を売る・捨てるといった処分は、民法第921条が定める「相続財産の処分」にあたり、相続を単純に受け入れた(単純承認)とみなされる場合があります。つまり、後から「やはり相続放棄をしたい」と思っても、先に片付けを進めてしまっていると選べなくなる可能性があるということです。何が「処分」にあたるかは状況によって判断が分かれるため、ここで一律の基準は示せません。相続放棄をするかどうか少しでも迷っているなら、片付けに着手する前に専門家(後述の法テラスなど)へ相談することをおすすめします。
期限がある手続きを先に確認する
迷いがない場合でも、期限のある手続きは先に把握しておく必要があります。
- 相続放棄の申述期限: 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法第915条)
- 相続登記の申請期限: 不動産の取得を知った日から3年以内。2024年4月1日に義務化され、施行前に発生していた相続は2027年3月31日までが期限です。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります(出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」)
相続登記そのものの具体的な手続き・必要書類は「空き家の相続登記・相続放棄の手続き」で解説しています。実家が将来空き家になる見込みがある場合は、「空き家問題の現状」もあわせて確認しておくと、片付け以外に決めておくべきことの見通しが立てやすくなります。
一人でも使える外部の手 — 業者と公的窓口
判断を一人で下し続けることと、作業まで一人でやり切ることは別の話です。外部の手を使える部分は使うという前提で、何が使えるかを確認しておきます。
業者に頼む場合に確認すること(当サイト159社の集計)
当サイトでは、遺品整理・生前整理・不用品回収などを扱う業者を収録しています。各社の公式サイト掲載情報を確認し、対応サービス区分・許可や認定の番号・受付時間・公表料金を1社ずつ数えたところ(159社・2026年10月1日時点を集計。「記載がない」は非対応ではなく公式サイトで確認できなかったことを意味します)、次のような内訳になりました。
一人で担う人にとって意味があるのは次の3点です。
- 生前整理と遺品整理の両方を同じ業者に頼める余地がある: 生前整理に対応する業者は117社(73.6%)あり、親が健在のうちの整理と、亡くなった後の遺品整理を同じ窓口で相談できる場合があります。問い合わせ先を複数に分けずに済めば、一人で管理する連絡先を減らせます。
- 買取に対応する業者なら、処分費用の一部を相殺できる可能性がある: 遺品買取に対応する業者は79社(49.7%)です。価値のある物を買い取ってもらえれば、処分にかかる費用負担を抑えられる場合があります。
- 受付時間を公式サイトに記載している業者は125社(78.6%)、うち「24時間」と表記する業者は28社(17.6%): 平日の日中に動きづらい人でも、問い合わせのタイミングを確保しやすい業者が一定数あります。
一方で、依頼前に必ず確認してほしいのが許可の有無です。古物商許可番号を公式サイトで確認できた業者は111社(69.8%)、一般廃棄物収集運搬業の許可番号を確認できた業者は40社(25.2%)でした。扱う物・作業内容によって必要な許可は異なるため、「許可があるかどうか」は依頼前に各社へ直接確認してください。許可の意味と見方は「遺品整理業者の許可・資格の確認方法」、間取り別の費用目安は「実家じまいの費用相場」で解説しています。
無料で相談できる公的窓口
業者だけでなく、判断そのものに迷ったときに使える公的な窓口もあります。
- 法テラス: 経済的に余裕のない人向けに、無料の法律相談(同一の問題について3回まで・1回30分)を実施しています。弁護士・司法書士費用の立替え制度もあります(資力基準あり)。相続放棄の期限が迫っていて誰にも相談できないときの最初の選択肢になります。
- 地域包括支援センター: 市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、全国5,487か所(ブランチ含め7,374か所、令和7年4月末現在)に設置されています。親の介護・生活面の相談全般を無料で受け付けています。
- 東京都空き家ワンストップ相談窓口: 東京都内の空き家の相続・売却・賃貸・管理・住替えなどを無料で相談できます(0120-776-735、平日9〜18時)。実家が東京都内にある場合の窓口として使えます。
次の一歩 — 今日、何から動くか
一人で担っている状況では、「誰かに確認してから動く」というプロセスがそもそも存在しません。だからこそ、次の順番で動くことをおすすめします。
- 物を処分する前に、相続放棄をする可能性があるかどうかを自分に問い直す。少しでも迷いがあるなら、片付けより先に法テラスへ相談する
- 相続の開始を知った日を基準に、3か月(相続放棄)と3年(相続登記)の期限をカレンダーに書き込む
- 片付け作業そのものは、対応区分・許可・受付時間を確認したうえで業者に頼める部分を切り出す。すべてを自分の手で終わらせる必要はありません
判断の数は多くても、期限のあるものから先に片付ければ、残りは自分のペースで進められます。状況別の具体的な進め方は「実家の片付けはどう進める?」、相続登記・相続放棄の手続きの詳細は「空き家の相続登記・相続放棄の手続き」を確認し、迷ったらまず法テラスへ連絡してください。
よくある質問
一人っ子で、実家の片付けの判断を全部一人でしなければなりません。まず何から手をつければいいですか?
最初にやるべきは『片付け始めること』ではなく『止めるべき物と期限を確認すること』です。遺品や家具を処分すると、相続放棄ができなくなる場合があります(民法第921条)。相続放棄をする可能性が少しでもあるなら、物を処分する前に期限(相続の開始を知った時から3か月以内、民法第915条)を確認してください。期限に関わらない片付けを進める場合の具体的な進め方は『実家の片付けはどう進める?』で状況別に解説しています。
遺品を片付けている途中で、相続放棄をするかもしれないと気づきました。もう一部処分してしまった場合はどうなりますか?
遺品や家具の処分は『相続財産の処分』とみなされ、単純承認(相続を単純に受け入れたこと)の扱いになる場合があります(民法第921条)。ただし何が『処分』にあたるかは状況によって判断が分かれるため、ここで断定的なことは書けません。相続放棄をするかどうか迷っているなら、これ以上片付けを進める前に法テラスなど無料の相談窓口へ早めに相談してください。相続放棄の期限は3か月と短いため、判断を先延ばしにしないことが重要です。
相続登記はいつまでにすればいいですか? 期限を過ぎるとどうなりますか?
相続登記の申請期限は、不動産の相続を知った日から3年以内です(2024年4月1日義務化)。この制度の施行前に発生していた相続については、2027年3月31日までが期限になります。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります(出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」)。手続きの具体的な流れは『空き家の相続登記・相続放棄の手続き』で解説しています。
業者に片付けを依頼したいのですが、一人で選ぶときに何を確認すればいいですか?
当サイト収録業者159社(2026年10月1日時点)を集計すると、古物商許可番号を公式サイトで確認できた業者は111社(69.8%)、一般廃棄物収集運搬業の許可番号を確認できた業者は40社(25.2%)でした。扱う物や作業内容によって必要な許可が異なるため、依頼前に各社へ許可の有無を直接確認することをおすすめします。許可の見方は『遺品整理業者の許可・資格の確認方法』で詳しく解説しています。
一人で全部決めるのが負担です。無料で相談できる窓口はありますか?
法テラスは、経済的に余裕のない人向けに無料の法律相談(同一の問題について3回まで・1回30分)を実施しており、弁護士・司法書士費用の立替え制度もあります(資力基準あり)。介護や高齢の親に関する相談全般は、市町村が設置する地域包括支援センター(全国5,487か所、令和7年4月末時点)が窓口になります。東京都にお住まいの場合は、空き家の相続・売却・管理などを無料で相談できる『東京都空き家ワンストップ相談窓口』(0120-776-735、平日9〜18時)もあります。
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